頭痛 治し方

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トリプタン製剤

2014年06月07日

 
トリプタン製剤は、片頭痛の特効薬。

 

 欧米同様、現在、日本でも片頭痛の特効薬として広く使われているのは、頭痛発作時に用いる「トリプタン製剤」です。
 トリプタン製剤は、片頭痛が起こるメカニズム(第2章の42ページの図参照)に基づいて開発された薬剤で、主に3つの作用があります。
 まず、異常に広がった脳の血管自体に作用して、血管の拡張やむくみを抑えます。また、脳血管の異常な拡張によって刺激を受けた周囲の三叉神経に働きかけて、三叉神経からの炎症物質(痛み物質)の放出を抑え込みます。さらに、脳幹部にある三叉神経の大本の三叉神経核に作用して、脳を上行する片頭痛の情報伝達を遮断します。
 つまり、トリプタン製剤は、表面的な現象として現れる痛みを抑えるだけでなく、片頭痛の際に受ける脳血管とその周辺の三叉神経のダメージを根本から回復させ、脳によけいな過敏性・興奮性を与えない、著しい効能を待った処方薬ということができます。(『脳は悲鳴を上げている 頭痛、めまい、耳鳴り、不眠は「脳過敏症候群」が原因だった!? 』p138~p139)

 

5種類のトリプタン製剤の処方が可能。
 

 なお、本書で紹介している薬の名前は、原則として、初めに表示してあるのが一般名(その薬を構成している成分)で、カッコ内が製品名(各製薬会社が独自につけた名前)となっています。
 まず、一刻も早く片頭痛のひどい痛みから解放されたい人に向いているのは、効果が素早く現れるリザトリプタン(マクサルト)です。吐き気が強くて口から飲めない人には、点鼻剤と注射剤がそろっているスマトリプタン(イミグラン)があります。また、片頭痛を長年放置してきて、鎮痛薬の薬物乱用気味になりかけている人にも効果を発揮するのがゾルミトリプタン(ゾーミッグ)です。
 さらに、効き目は穏やかであるけれど確実に効果を発揮するのがエレトリプタン(レルパックス)です。そして、効果が出るまでにはやや時間がかかるけれど、比較的長時間にわたり効果が持続するのがナラトリプタン(アマージ)です。
 どの種類・剤型のトリプタン製剤を選択するかは、頭痛医療に携わる医師の裁量によるところが大きいといえます。その際、医師が忘れてはいけないのは、つらい頭痛に悩む患者さんにトリプタン製剤を長期にわたって上手に使っていただくために、使用した患者さんの感想に常に耳を傾け、状況に応じて適切なトリプタン製剤を処方してさしあげることだと、私は思っています。
 一方で、トリプタン製剤は痛みを取り除くだけの薬剤ではなく、痛みの水面下で生じている脳の興奮状態をも取り払い、脳にそれ以上の余計な過敏性・興奮性を与えない薬剤であることを患者さんにも十分に理解していただき、ご本人が納得してトリプタン製剤を使うことがなによりも重要だと考えています。
 なお、片頭痛と診断されても、心臓や脳、肝臓などに病気がある人には、トリプタン製剤が使えないこともあります。トリプタン製剤の使用上の注意も表にまとめましたので参考にしてください(147ページ参照)。(『脳は悲鳴を上げている 頭痛、めまい、耳鳴り、不眠は「脳過敏症候群」が原因だった!? 』p146~p148)

 

投薬の目安は、アロディニア症状。
 

 優れた効能を持つトリプタン製剤ですが、その働きを最大限に生かすには、三叉神経から脳血管の周囲に放出される炎症物質をできるだけ少ない量に抑える必要があります。わかりやすくいうと、炎症物質が流れ出ている”蛇口”を、なるべく早めに締めることで、トリプタン製剤の効果が大いに発揮されるというわけです。
 そのため、トリプタン製剤の場合、使うタイミングが非常に重要になります。タイミングとしては、片頭痛が起こり始めたら(頭痛期に入ったら)、できるだけ早く使うのが好ましいとされています。早期使用の目安としては、「アロディニア(allodynia=異痛症)」という症状が注目されています。
 片頭痛の際にもたらされる脳の興奮状態は、脳幹部(大脳と脊髄の境目)の三叉神経核から起こり始めます。
 三叉神経核で興奮が生じると、まずは頭が痛くなる側の三叉神経の支配領域である頭皮や目の周りに、なんとなく感覚が過敏になったような違和感が生じます。同時に、三叉神経核の興奮状態は、頚髄(首の骨の中に収まっている脊髄)にも伝わって、肩が異常に突っ張ったような肩こりが生じます。
 この時点では、片頭痛の情報はまだ三叉神経核にあります。
 その後、片頭痛の情報は、数時間ぐらいかけて、視床という脳の中心部にある手足の感覚の中枢を通過し、最終的には大脳の表面に到達して、片頭痛の激しい痛みとなって現れます。そして、片頭痛の情報が視床を通る際には、視床が興奮し、そのために今度は頭が痛くなる側と反対側の手足にしびれなどの感覚過敏が出現します。つまり、手足に情報を送る神経の回路は、延髄の錐体文叉と呼ばれる部位で交叉しているため、主に痛みとは反対側の手足にしびれが生じるのです。
 このように、片頭痛発作のごく起こり始めの時期には、頭皮や顔面の違和感や、異常な肩こりなどが出現し、これを「早期アロディニア」と呼んでいます。
 一般に、この早期アロディニアが現れたときにトリプタン製削を使用すれば、炎症物質が流れ出ている”蛇口”を早く締めることができ、片頭痛の情報が視床を介して大脳に到達するのを遮断することが可能です。そのため多くの場合、1~2時間以内にほぼ完全に片頭痛が治まるとされています。
 しかし、片頭痛の情報が視床を通過し、手足がしびれるような違和感(後期アロディニア)が現れてからトリプタン製剤を使用したのでは、ときすでに遅く、片頭痛の情報が大脳の表面に到達して本格的な痛みが起きてきます。こうなると、頭痛は完全には治まらず、その後、数日間は、頭痛発作の再発に悩まされることになります。
 日本人の場合、このアロディニアの症状が現れるのは、片頭痛の患者さんの約60~80%と推定されています。
 アロディニアをはっきりと自覚していない片頭痛の患者さんでも、目の奥から痛みが生じ始めるという方が多いのですが、この目の奥の痛みも、眼球周辺組織に分布している三叉神経の興奮症状と考えられ、やはりアロディニアの1種ととらえてもいいでしょう。(『脳は悲鳴を上げている 頭痛、めまい、耳鳴り、不眠は「脳過敏症候群」が原因だった!? 』p139~p142)

 

アロディニア症状の「感覚異常」
 

 アロディニアの症状を一言で表現すると「感覚異常」ということになるのですが、患者さんのお話をうかがっていると、じつにさまざまな身体症状として現れてきます。
 ある患者さんは、片頭痛発作の起こり始めに、眼鏡をはずしてしまうことがあるそうです。これは、アロディニアが顔面の違和感として現れ、眼鏡のふちが顔に当たるのを疎ましく感じるためにとってしまう動作です。
 また、ある患者さんは、片頭痛が始まると、決まって着けているコンタクトレンズがごろつく感じがするそうです。そこで、コンタクトレンズに不具合が生じたと思い、わざわざ眼科を受診されたといいます。しかし、この症状は、目の表面の角膜にも三叉神経が分布しているため、この三叉神経の興奮状態がもたらすアロディニアにほかなりません。
 別の患者さんは、片頭痛発作が起こると、発熱時に使う冷却シートを順に貼り、広がった皮膚の血管を縮めて、なんとか本格的な痛みが現れないように試みるそうです。貼って数分したところでいつもシートをはがしてしまうといいますが、これも、アロディニアによる顔面の違和感の疎ましさがとらせる動作と思われます。

 以上のような症状は前期アロディニアであり、これが現れた時点でのトリプタン製剤の使用が、多くの場合、薬の効果を確実なものにしてくれます。しかし、後期アロディニアになると、暑いわけでもないのに暑苦しいような感じがして、着衣を脱ぎ捨てたり、寝具をはねのけたりするような症状を呈する患者さんが少なくおりません。
 片頭痛発作の真っ最中になると、脳全体の興奮状態が強くなり、このような極度の、体全体に及ぶ感覚異常が出現しやすくなるのです。(『脳は悲鳴を上げている 頭痛、めまい、耳鳴り、不眠は「脳過敏症候群」が原因だった!? 』p142~p143)

 

トリプタン製剤の効き目がイマイチと感じられたら、頭痛の専門医と相談して、予防的治療の導入の検討も。
 

 片頭痛の予防薬としてよく使われるのは、バルプロ酸ナトリウム(デパケン)やクロナゼパム(リボトリール)、もしくはトピラマート(トピナ)といった抗てんかん薬です(抗てんかん薬の中で片頭痛予防薬として健康保険の適用があるのはバルプロ酸ナトリウムのみ)。これらの薬剤には、異常に増大した脳の過敏性を減弱させて、視覚前兆の出現を減らしたり消失させたり、頭痛の頻度や程度を改善させる効果があります。トピラマートに関しては、薬物乱用頭痛の治療でも効果を発揮し、また片頭痛の予兆症状である異常な空腹感を抑える働きも持っています。
 また、1ヵ月の大半で片頭痛発作に見舞われ、脳の興奮状態がもはや容易に拭えなくなった慢性片頭痛では、当然、予防的治療が必要となり、バルプロ酸ナトリウムやクロナゼパム、もしくはトピラマートを使って、脳の興奮状態を少しずつ改善に向かわせていきます。この予防的治療で、慢性片頭痛を本来の片頭痛の姿に戻していくわけです。
 抗てんかん薬のほかにも、片頭痛の予防に有効な薬はいろいろあり、患者さんの症状などによって処方する予防薬が決められます。もちろん、予防薬を服用している最中でも、片頭
痛発作が起きたらトリプタン製剤を使用します。(『脳は悲鳴を上げている 頭痛、めまい、耳鳴り、不眠は「脳過敏症候群」が原因だった!? 』p156~p157)